Ende


夜、
大きな荷物をベンチに二つ置いて電車を待っていると
塾の鞄をしょい水色のジャケットを着た
小さな男の子が走ってきた
僕はボーと考え事をしていた


しばらくしてこの少年はここに座るかもしれないと気づき、
僕も座りたい気持ちになりベンチにおいていた荷物を抱え、座ることにした
すると彼もいそいそと隣のベンチに座った


そのいそいそしている割に不思議と落ち着いた振る舞いをみて
(だって彼はそれまでそんなそぶりはまるで見せなかった)
顔こそ黄色い帽子で隠れているものの仲良くなれるかもしれないと思い、
声をかけたい気持ちになり、
僕はその少年の観察を続けた


彼は背中にしょった鞄をすばやくおろしその中から大きな本を取り出し
読み始めた


彼の本は図書館で借りたものらしく、
とてもくたびれていて、紙は黄ばんでいるし、背表紙のデザインもなんだか古臭いものだった、


そして
一瞬見えたそこには
「ジムボタンの機関車大旅行」
そして今まさに彼の読んでいるページには
「見かけ巨人の話」と書かれているのがみえた


その後、すぐに電車が来て、
僕たちは別れ別れになった
その2つの短い文が頭からはなれず、


僕はそれだけで、何かひとつの物語を読み始めた(あるいは冒険が始まった)ような気分だった。




家に帰ってからネットで調べてみると、
ミヒャエル・エンデの書いたものだということが判った